特別支援学校へヒロ君が転校した頃、僕は高校生になっていました。
地元から数駅程離れた高校、それまで同級生だった人で同じ高校に通う人は一人だけでした。



つまり…



ヒロ君の事を知っている人が殆どいないのです。
それまでは全ての人が知っていたその事実。
しかしこれからは全学年1000人程いる中で知っているのはただ一人。



これは初めての経験でしたし、不思議な感覚でした。
前述の通り段々と弟から心が離れていた僕は、正直これからは普通の環境の中で当たり前の生活が出来ることに何とも言えない開放感を感じていました。




この記事を読んでいる方は、僕の事を血も涙もない酷いヤツだと思うかもしれませんね。
読んでいるきょうだい児の方は…ひょっとしたら共感出来る部分もあるかもしれません。



僕自身としては…
当時の自分を振り返って、子どもとはいえ間違った行為だったとは思っています。



でも自分で自分に対する嫌悪感を抱く部分はここではない。
過去のヒロ君への行為で一番自分を許せないのは…これではない。



僕は高校で部活に入ってましたが、ある日下校中の電車の中で仲の良かった女の子四人が僕の家に少し寄りたいと言い出したんです。
僕は正直焦りました。



というか必死に色々と理由をつけて断ろうとしましたが、女の子パワーは凄いです。
全く聞き入れて貰えませんでした(笑)



僕は諦めてその子達を自分の家に案内することに。
自宅につくと玄関前でちょっとだけ待ってもらい、家に入るなり母親に友達が来たことを伝えました。






そしてヒロ君を二階に隠させて絶対に声を出させないように、と言いました。






姿を見られたら一目でバレてしまう。
声を聞かれたら即座におかしいと思われてしまう。
せっかく楽しい高校ライフが始まったのに、また前のような環境に戻りたくない！！



偏見の目で見られたくない！！
イジメられたくない！！
当たり前が…欲しい！！




この時の僕はナニカに飢えていたのかもしれません。
そして酷く臆病で…酷く自分勝手でした。



二日前の記事で、【昔は障がい者は閉じ込めて当たり前、人前に出さないのが当たり前】と書きました。






僕は過去の差別が当たり前の時代の人間と全く同じ事をしていたのだ…。






僕も結局のところ人の皮を被ったナニカだった。
この時の母やヒロ君の気持ちは想像することも出来ません。



この件に関しては未だに母と話した事がありません。
僕は…最低な人間だ。



その後僕は暫くのあいだ自由を追い求め、楽しいことを追い求めて生きていくことになります。
最早少年もりりんの心にはヒロ君への気持ちも、家族への愛情もなくなってしまったのでしょう。



非行に走る…とまではいきませんでしたが、やんちゃに遊ぶことが増えていきました。
親父とはことあるごとに大ゲンカをしていました。



そしてその結果。



家を飛び出し、そのまま十代の間帰宅することはありませんでした。

　　
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